一週間前。
・・・ヴァスコとニッキーにすら言うなだと? それはないだろう。チームメートなんだから。チームの中で秘密はないだろう。
でも、今回は言わないでくれ。
少しの間の辛抱だ、本当に。とにかく俺を信用してくれ。
申し訳がないが、働いている俺たちの前にせめて顔でも見せてくれれば、信用する気にもなれるけれど。
顔が見えなくても信用してくれ。おまえみたいな若造にあれこれ言われる筋合いはない。夢を叶えるまたとないチャンスをお前に与えているのだ。ひとつ、試してみないか?
・・・いつまで黙っていろって?
それは心配するな。その時がくればわかる。
今。
何をやっているのか、わかっているといいんだが。
もちろん!即興でやってるぜ。
「信じられない展開です。」
「編集部では、すでに規則の確認を始めています。もしも失格になったとしたら・・・」
・・・レガシーにとってチャンピオンシップはおしまいです。見たこともないシナリオが展開しています。
なくとも、過去25年間には。フォーミュラ ワープ、史上初の出来事です・・・
・・・マシンを人間が繰っています!!
マシンよ、頑張れ。初参戦のレースでビリはいやだろ?
シートごとぶっ飛ばしてやりたいな。
いったい全体何やってるんだ??
退場になってもいいのか??
おまえ、何か知っていたのか?
何にも。道具を蹴らないでよ・・・
「いくら兄さんがバカでも、橋型クレーンのせいじゃないんだから・・・」
聞こえてるぞ、ニッキー、マイクがオンだ。
「わかってるわよ。いったい何考えてるの?」
「ごめんよ。後で必ず説明するから。」
「本当に俺は関係ないぞ。」
何かにつけ文句を言うようにプログラムされているんじゃないのかい? ポジティブに考えようぜ・・・まだレースから落伍したわけじゃないんだし。
人からコントロールされるのが嫌なんだよ。
わかったよ。でも、今のところは俺のやりたいようにさせてくれ。
話はレースが終わってにしようぜ。
「レガシーが見事な展開を見せています。リアルタイムデータによるとVIS.ユーザー の85%がレガシーのマシンに注目しています。」
マッキンタイヤは10分の1秒でも挽回しようと奮闘中・・・もうほぼ先頭グループに追いつきました。この後どうなるか注目です。
かなり厳しい戦いとなるでしょう。素早く超正確なリアクションを要するレースです。フォーミュラ ワープは、人間のためのスポーツではありません。
ニュースが入りました。WMFの委員会がレガシー レーシングへの罰則を検討中です。
しかし本当に疑問なのは・・・レガシー レーシングはなぜ、あえて旧式運転システムのマシンにしたのでしょうか?
チームオーナーにきいて見なければ・・・それが誰だかわかれば、の話ですが。
「・・・マッキンタイヤが巻き返しを続けています。」
生きてレースから帰ってきたら、ぶっ殺してやる。
やめてよ。
規則を細かくチェックしたけれど・・・自立運転システム付きのマシンを使うことが条件になってるわ・・・
・・・でも、具体的に人が乗っていけないとは、どこにも書いてないわ。
・・・ちょっと屁理屈ではあるけれど、規則違反ではないということよ。ボス、うまいことやったわね。
・・・ということは、失格にはならないんだね?!
それを決めるのはWMFだけど・・・少なくとも規則上は大丈夫。
それなら殺すのはよそう・・・でも俺たちに隠していたのは許せない。
誰だってそう思ってるわよ。
何度も言うようだけど、このスピードで次のコーナーに入ったら、ほぼ確実に激突する。シミュレーションではいつもそうだった・・・
・・・話は後にしてくれ。今はそんな余裕はない。
後っていつだ? このまま続けたら、完走できなくなるぞ。
励ましの言葉をありがとう。
他のマシンが、このサーキットで一番難しいコーナー、ザ・ナローズにまさに入ろうとしているとき、レガシーが後ろに着きました。
マッキンタイヤは減速する気配もありません。このスピードでコーナーに入れば、貴重な数メートルを稼いで追い越せるかもしれません。アイディアとしては良くても・・・実際はとんでもないことです。
何するの?
ブレーキ踏め!
ブレーキ!
ブレーキ!
ブレーキかけろ!!
すごい!
やったぜ!!
バンザ~イ!!!
「無謀に近い操作で、マッキンタイヤは文字通りグループ後部の2台を見事に追い越しました。」
「レガシーのドライバーは次々と挽回し、トップの座に追いつこうとしています。」
どうだ?いいだろ?
キチガイじみてるぞ。
「確かに。でも成功してる。先頭の3台に近づいてる・・・」
「・・・クラッシュしないでよ、ここで。」
俺だってそう願ってるよ。
10分前には最後部だったのに、今では4番目だ。・・・いったいこいつは何者だ??
謎の人物だ! アルゴリズムは奴の動きを予想しきれない。攻撃力を強化して、リスク限度を15%下げる・・・これで対応できるといいんだが!
レガシーが猛烈な巻き返しを続けています。もはや有望株のミスカソニックさえ追い抜けば、記録に残るマッキンタイヤの勝利です。
どうにかしろ! 追い上げてくる!
できることはもうやっている! パラメータはどれも最大だ!!
あと少し! もうちょっとで勝ちよ!
早く! ここで見放すなよ!
最後の一踏ん張りだ!
やった!
ちくしょう!
マッキンタイヤが史上に残る勝利を収めました。数秒前にWMFが正式な声名を発表しました。レガシーは反則ではなく、失格にはなりません。
どんでん返し満載のGPの幕を快挙で閉じました。
今度からはやめてくれよな?チームメートなんだから。隠し事はなしだ。
わかった、約束するよ。
あんたのためにもね。随分ハラハラさせてくれたわね。さあ、抱きしめさせて。
・・・あんな青二才に負かされたのかよ!ボスになんと言ったらいいんだ?
真実を・・・予期しないところを狙われたんだ・・・今度から気をつけるよ。不意打ちにやられないように!
もう1時間も黙りこくってるけど・・・どうしたんだい?音声合成機能の故障?
認めないわけにいかないな、今日はでかした。いったい何だったのか・・・俺にはわからない。
そのうち話すよ・・・でも今はよそう。今は・・・
・・・勝利の喜びを堪能しようじゃないか。

つづく

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